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南谷忠志_宮崎の植物民俗記◎鉱脈社

生活を彩った草木たちー振興から祈り、生活暦の遊び、食物から薬にと人と草木の豊かな関わり7章587種南谷忠志_宮崎の植物民俗記◎鉱脈社

南谷忠志著 A5判/並製/368ページ 2023年11月30日初版発行 植物学者が里人に聞いた植物民俗誌、40年間の集大成。 1983年11月に、日向市美々津田の原で黒木義男さん(68)と黒木巌さん(49)から「11月の亥の日には、庭のイノコギク(黄色の小型菊)を大黒さんに供える。そして、『イノコギクが咲いたぞ、イノコモチをつくぞ』と言い、集落の家々でイノコ餅をついた」と聞いた。 一体、イノコギクが何なのか、地元の地域興しに熱心な安藤さんに問い合わせ、調査していただいた(2022・8・2)。が、「そのようなキクを植えていたように記憶している」という回答はあるが、今はどの家からも消え、分からないという。39年前の語り部、黒木義雄さんは既に亡くなられ、巌さんも88歳になられ今は施設に入っているとのこと。 植物民俗の聞き込み調査を始めて40年以上が経過した。これまでに300名ほどの方々の語りを記録してきたが、ほとんどの方が亡くなられているのではないかと思われる。ここに記録した内容は、もはや伝承が途絶え、過去のものとなっているものと思われる。最近ではスミレやヒガンバナ等のごく普通な草も、聞き込んでも方言さえ返ってこなくなった。 近年になって産業構造や生活様式が急変した結果、かつてのような山川の自然を友とした生活が薄れ、野山の草木とのかかわりはもちろん、方言名までが急速に忘れ去られつつある。農山村においてさえ、これらの伝承は難しく、このままではこれらの貴重な地方文化の消滅は目に見えている。植物方言や民俗は祖先の方々が営々と築いてこられた文化遺産であり、いつまでも途絶えることなく伝承されんことを祈りたい。 一方、発達しすぎた文明は人間を横暴にさせ、大げさな言い方かもしれないが、地球は病んでいるのでは。このような地球を次世代の子どもたちに渡してはならないと思い、この本を編んだ。それらの解決へのヒントを与えてくれるのかもしれない。(「あとがき」より) 【目次】 巻頭のことば 東京大学名誉教授 小石川植物園前園長 邑 田  仁 はじめに [植物民俗収集の方法について] 特記 世界遺産や国宝など重要文化財に使われている宮崎の植物 第一章 予兆と祈り―災い除け・占い・神仏事と草木― 1.草木に関するいわれ 1.庭に植えてはいけない草木 2.不幸を招く草木 3.縁起の良い草木 2.災い除け~防災・防火・防風・防音への利用 1.雷除け 2.火除け 3.風除け 4.護岸や境界木 5.防犯・防火・防音 6.軒下の土止め 3.病・魔除け 4.占い―天候・災害・豊凶作 1.天候・災害占い 2.豊凶作占い 5.神事や仏事にかかわる草木 1.神仏への供花やご神木 2.墓の供花 6.祭りや神楽の植物 1.神楽に登場する植物 2.特殊神事・祭りに登場する植物 第二章 癒やす・防ぐ―薬としての効能― 7.薬として―人の病に 1.胃腸の病 2.頭痛 3.神経痛 4.痛み 5.皮膚の病 6.呼吸器の病 7.顔部の病 8.高齢者の病 9.婦人病 10.小児の病 11.新生児の人生儀礼 12.その他の病 99 8.一般薬として―虫除け、害獣除け、マムシ除け、殺虫剤、石けん等 1.虫除け 2.害獣除け 3.マムシ除け 4.殺虫剤 5.ウジ殺し 6.家畜等の薬 7.髪洗い・石鹸・化粧品代わり 8.糊の材料 9.その他の利用(カキの渋抜き他) 第三章 草花遊び―子どもの生活とともに― 9.草花遊び 1.音出し遊び―パンパン、ピンピンと音立て 2.笛遊び 3.字書き遊び 4.相撲取り遊び 5.回す遊び 6.写す遊び 128 7.生きもの釣り 8.変身遊び 9.そっくりさん 10.身につけ飾り遊び 11.水遊び 12.器用な遊び 13.ぼくとり遊び 14.女の子の遊び 15.男の子の遊び 16.いろいろな遊び 第四章 食べる―救荒食から日常食に― 10.食べる 1.葉や新芽 2.地下部(芋・根) 3.果実・種子 4.花や穂 5.花の蜜 6.団子を包む葉 7.お茶や水の代用 8.タバコの代用 9.その他 第五章 自然暦と生業に使われる草木 11.自然暦に使われる草木 1.種まき 2.田植え・稲刈り 3.サツマイモの床伏せ 4.農作業全般 5.ゼンマイ・マツタケ・シイタケ・タケノコ採り 6.魚や鳥獣 199 12.農村での生業 1.水田の稲作 2.湿田の稲作 3.畑作と雑草 4.焼き畑 5.集落地の雑草 6.虫除け・鳥追い 7.牛馬の世話 8.農耕儀礼 9.農具を作る 10.収穫物の保存 13.山村での生業 1.スギ・ヒノキの指標 2.シイタケの栽培 3.炭を作る 4.猟をする 14.漁村の暮らし 1.船を造る 2.魚を獲る 第六章 年中行事の植物 15.年中行事の植物 1.大正月 2.仕事始め 3.六日年・七日正月 4.七草、七とこ祝い 5.作始め 6.小正月 7.二十日正月 8.桃の節句 9.お大師さん祭り 10.花祭り 11.端午の節句 12.夏越し祓い 13.七夕祭 14.夏の土用丑の日 15.お盆 16.八朔の節句 17.十五夜 18.ムカゴ節句 19.亥の子祭り 20.氏神祭り 21.冬至 22.正月の準備 第七章 用具・道具の材料、材質等 16.用具・道具の材料 1.運搬用具 2.柄ものの材料 3.身につける 4.日用品 5.工芸品など 6.運動具・楽器・文具 7.信仰儀礼・葬送 8.台所用品 9.携行する飲食用具 10.家屋・建物 11.その他 17.雑録~木の材 1.薪によい木と悪い木 2.材が堅い木と軟らかい木 民俗の語り部たち/[参考文献]/あとがき [筆者略歴] 南谷 忠志(みなみたに ただし) 1940年 台湾台北市生まれ 1963年 宮崎大学学芸学部卒業 1963年~ 宮崎県立富島・小林・高鍋・宮崎西高等学校(29年間勤務) 1989年~ 宮崎県総合博物館(9年間勤務) 2001年 同上副館長退職 1996-2011年 県立看護大学・宮崎大学・南九州大学非常勤講師・客員教授 日本植物学会、日本植物分類学会、植物地理・分類学会、日本シダの会会員 環境省希少野生植物種保存推進員、日本植物分類学会絶滅危惧植物問題検討委員、九州森林管理局鹿対策検討委員、宮崎県文化財審議会委員、宮崎県環境保全審議会委員 緑と花の文化知識認定試験出題員(民俗分野) 宮崎県文化賞(1991)、環境大臣賞(2002)、松下幸之助花の万博記念賞(2004)、日本植物分類学会賞(2005)、国際ソロプチミスト環境貢献賞(2005)受賞 著書:日本の天然記念物(講談社)、ふるさと大歳時記(角川書店)、週刊朝日百科「植物の世界」(朝日新聞社)、レッドデータプランツ(山と渓谷社)、日本植物種子図鑑(東北大学出版会)等共著多数、「日本産ミツバツツジ類(ツツジ科)の分類」等論文記載 オナガカンアオイ・ヒュウガアジサイ・ヒュウガシケシダ・ヒュウガカナワラビ・ヒュウガヒロハテンナンショウ・ヒュウガセンキュウ・ヒュウガオウレン等多数の新種発見 私たちが心をこめて作っています。 鉱脈社は1972年に誕生し、2022年に50周年を迎えた、宮崎に根ざした出版社です。「月刊情報タウンみやざき」などの情報誌のほか、単行本やシリーズ書籍の出版、自費出版のお手伝いを手がけています。雑誌分野ではスタッフ一丸となって足で情報をかせぎ、書籍出版分野では著者様と力を合わせて納得のいく本づくりを心がけています。私たちが愛情込めて作った本を、ぜひ手に取ってみてください。

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